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「情報通信白書 令和3年版」から今を読む その3 ~ITによる業務効率化の今~

松田 幸裕 記


14日、衆議院が解散されました。コロナ禍の中、あの場で大きな声での万歳三唱は印象的でしたね。あきれた人も少なくなかったのではないでしょうか。

私たちの未来につながることですので、しっかり考えて投票したいですね。各党からばら撒きとも思える政策が出ていますが、甘い言葉に惑わされずに何が私たち国民の明るい未来につながるのかを考え、見極めていきたいです。

本題に入ります。前回および前々回の投稿「「情報通信白書 令和3年版」から今を読む その1その2」では、総務省より公開された「情報通信白書 令和3年版」を題材にして、日本におけるデータ活用やITへの向き合い方などについて考察しました。前回の投稿でも書きましたが、本編は400ページを超えるボリュームで、貴重な内容がたっぷり詰まっています。また、情報通信を俯瞰して眺めたうえでの深い洞察もされており、とても勉強になるため、ぜひ本編を読んでみることをお勧めします。

本投稿でも、この情報通信白書からいくつかのポイントをピックアップし、企業におけるIT導入の目的や効果について考察してみたいと思います。

デジタル・トランスフォーメーションの目的と効果

本編で、デジタル・トランスフォーメーションの現状について詳細に説明されています。その中で、日本・米国・ドイツにおける「デジタル・トランスフォーメーションの目的」や「デジタル・トランスフォーメーションによる効果」のグラフがあります。

デジタル・トランスフォーメーションの目的

デジタル・トランスフォーメーションに取り組むことによる具体的な効果

これを見ると、目的、効果共に他国と比較して日本において高いのは「業務効率化・コスト削減」です。

本編ではデジタル・トランスフォーメーションの定義について触れられていて、その中には以下のような話もされています。

これまでに企業が実施してきた情報化・デジタル化(デジタル技術を用いた単純な省人化、自動化、効率化、最適化)はデジタル・トランスフォーメーションとは言い難く、社会の根本的な変化に対して、既成概念の破壊を伴いながら新たな価値を創出するための改革がデジタル・トランスフォーメーションである。

そう考えると、「デジタル・トランスフォーメーションの目的と効果が効率化?日本のデジタル・トランスフォーメーションは、デジタル・トランスフォーメーションと言えないのでは?」など疑問に思う人は多いでしょう。ただ、これはあくまで言葉の定義の話なのでここで止めておきます。私が気になっているのは言葉の定義ではなく、「日本における効率化はいつになったら実現できるのか?」という疑問です。この数十年間、日本では業務効率化を主の目的としてIT導入を進めてきたと思っていますが、未だに主の目的や効果は業務効率化です。ということは、業務効率化という目的が未だに不十分なままという見方もできてしまいます。新しい業務が生まれてきて、その効率化というものは必要なため、業務効率化のためのIT導入がゼロになることはないと思いますが、今でも業務効率化が主の目的になっているというのは問題だと感じています。

以降では、この見方が正しいとした場合という前提で、原因として考えられることをいくつか書いてみたいと思います。

原因1.ITのみで効率化を図っている

業務の合理化を行ううえでの進め方を示した、「ECRS」というものがあります。Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替)、Simplify(簡素化)の頭文字をとったもので、「業務合理化とは、まず不要な作業を無くし(E)、次に類似する作業の結合と異なる作業の分離を行い(C)、さらに作業順序や作業場所などの入れ替えを行い(R)、そのうえで各作業要素の簡素化(効率化)を行う(S)」という考え方です。

このうちITが絡むのは最後のSのみですが、ITを導入する際にその前のECRをすっ飛ばしてSのみを考えている可能性があります。基幹業務システムなどはECRSという順序でしっかり検討されていることが多いかもしれませんが、その他の業務でのパッケージやクラウドサービス導入などではこの考え方が抜けてしまっているように思います。

原因2.現行踏襲への意識が強い

以前の投稿「JUAS 企業IT動向調査報告書2021から今を読む その3」でも触れたため、詳細はそちらをご参照いただきたいと思いますが、IT導入における要件定義では「現行のシステムではこういうことができるけど、新システムではできる?」という現行踏襲を求める話が多く、業務を改善するという意識が薄い傾向にあるように思います。

前回の投稿「情報通信白書 令和3年版」から今を読む その2」でも書いた通り、IT導入のための各種の行為が「ITで価値を創出する」ためではなく「ITを導入する」ために行われているように見えます。

IT屋がITのプロとして、IT導入のあるべき姿を追求し、ユーザー企業のこのような意識を是正できればよいのですが、導入ベンダー側も今までのやり方に慣れてしまっていて、つい「現行はどうですか?」など現行を基準とした検討を行ってしまいがちです。

デジタル・トランスフォーメーションを推し進めることと並行し、改めて「真の業務合理化を実現する」ために、IT企画やIT導入のあるべき姿を再考してみるべきではないかと思っています。