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「情報通信白書 令和3年版」から今を読む その1 ~データ活用~

松田 幸裕 記


新型コロナウイルスの新規感染者数が減少し、ニュースや情報番組では自民党総裁選の話題が多くなっています。各候補者が自身の考え方や政策などをアピールしていますが、私の中でいくつか疑問が生じています。

前置きで長くなるのも良くないためその中の1つだけを書くにとどめますが、「党」とは何なのだろうか?という疑問が強くあります。4名の候補者の話を聞いていると、個々のテーマにおいてはそれぞれ考え方が異なります。かなり異なる考え方を持っている人たちなのに、なぜ1つの「党」という存在に群がる必要があるのでしょうか。日本では各党の基本思想においても明確な違いがない気もしますし、いっそ「党」という存在を「比例代表制」や「政党助成金」などもひっくるめて日本からなくしてみたらどうか、と感じました。

「党」という存在によって、与党以外の議員が無力化しているように見えますし、党同士のいざこざに使われる労力も無駄な気がしています。「派閥」は批判の対象になることがよくありますが、「党」についても改めて日本としての必要性を議論してみるべきではないかと感じています。

本題に入ります。総務省より、「情報通信白書 令和3年版」が公開されました。本編は400ページを超えるボリュームで、貴重な内容がたっぷり詰まっています。また、情報通信を俯瞰して眺めたうえでの深い洞察もされており、とても勉強になるため、ぜひ本編を読んでみることをお勧めします。

何回かに分けてこの情報通信白書から情報をピックアップして考察していこうと思いますが、本投稿では、「データ活用」についての情報を基に、日本における現状と今後のあるべき姿について考察してみたいと思います。

アンケート結果から見える日本の傾向

企業におけるデジタルデータの活用状況として、「企業におけるパーソナルデータの活用状況」、「企業におけるパーソナルデータ以外のデータの活用状況」のグラフが掲載されていました。パーソナルデータは「サービス等から得られる個人データ」と書かれているため、いわゆる顧客情報ですね。2つのグラフに大きな傾向の差異はないため、以下では「パーソナルデータの活用状況」のグラフのみを載せます。

企業におけるパーソナルデータの活用状況

これを見ると、日本におけるデータ活用が進んでいないことがわかります。白書の本編にはその理由もアンケート結果として記載されていますが、他国と比較して日本に多い理由として「データを取り扱う(処理・分析等)人材の不足」があります。

BIの位置づけ

以前の投稿「データドリブン経営の実現にむけて その4」で、BI(ビジネスインテリジェンス)の位置づけにおける変化について触れました。元々ビジネスインテリジェンスとは、データを分析するのはデータ分析の専門家とは限らず、経営者や企画部門、一般社員が分析の専門家に頼らずにデータ分析を行い、意思決定を迅速に行うというコンセプトで名づけられました。しかし実際はデータ分析担当など限られた人材でデータを分析するというやり方になってしまっていました。それが最近になって「セルフサービスBI」という名前にも表されるように、データ分析担当のみでなく一般社員などもデータ活用をすることが推奨されるようになりました。元々定義されていたBIに立ち返った形になります。

このBIの位置づけと前述の日本における「データを取り扱う(処理・分析等)人材の不足」を合わせてみると、もしかすると日本では本来のBIといえるセルフサービスBIが浸透していないのかもしれませんね。本当は組織に属する誰もが分析・洞察・改善していけるのに、「分析するのは特定の人材で」という考え方のもと、分析の専門家を求めてしまっている、そんな可能性もありそうです。

新型コロナウイルス対策におけるデータ活用

データ分析・活用においては、そのためのツールが導入されれば問題が解決されるというものではありません。思考と行動のプロセスを抜本的に変えなければ改善できないと思っています。

例として、皆さんとして身近な新型コロナウイルス対策について触れたいと思います。最近になって新型コロナウイルスの新規感染者数が大幅に減少していますね。ニュースや情報番組では、「なぜこんなに減っているのでしょう?」という議論がされていますが、専門家やコメンテーターから出てくるのは「~が影響しているからかも…」という推測の域を出ない発言しかありません。政府や分科会からも、データに裏付けされた納得感のある情報は出てきていないと認識しています。何度も「第~波」という形で感染拡大の波を経験し、その都度「検証が必要」というコメントはありますが、波を経験した後に振り返ると検証するだけのデータがない、という事態が続いています。

昨年5月の投稿「新型コロナウイルス対策をデータドリブンの側面で考える その2」で、感染拡大への対策として決定的にデータが足りないという問題提起を行いました。力及ばずでしたが、昨年5月に東京都で行われた「新型コロナウイルスを克服し、東京の未来を創るアイデアを募集します!」という募集に対し「データの収集と活用」を中心とした対策をアイデアとして送ることもしました。この頃に強く感じた問題は、今もまったく変わっていません。

データは待っていても集まることはなく、仮説を出し、その仮説を検証するためのデータをどのように集められるかを考え、データ収集する仕組みを作らなければ、検証はできないのです。これはコロナ対策のみでなく、様々な企業活動においても言えることだと思っています。

日本においてこのように思考と行動のプロセスを変化させていくことが重要なのではないかと、強く感じています。