松田 幸裕 記
前回の投稿「テレワークは「善」なのか?「悪」なのか? その1」では、国土交通省より公開された2024年度の「テレワーク人口実態調査結果」を中心に、企業における昨今のテレワーク事情について触れました。
現状、テレワーク実施率は減少傾向にあり、主な理由として以下が挙げられるという話をしました。
- コミュニケーション不足
- 人事評価が困難
本投稿では、このうちの「コミュニケーション不足」について考えてみたいと思います。
テレワークにおけるコミュニケーションの課題
テレワークには「コミュニケーションがとりづらく、業務効率が低下する」というデメリットがあると言われています。しかし私から見ると、このデメリットについて部分的には納得できますが、納得できない側面もあります。
私が疑問に思っているテーマとしては、主に「メールやチームコラボレーションツール」と「Web会議」がありますので、それぞれで考えてみます。
メールやチームコラボレーションツールでの課題
企業でのリアルタイムでない(対面や電話、Web会議以外の)コミュニケーションとしては、メールやチームコラボレーションツール(Teams、Slackなど)があります。このツールの使い方を見ている限り、「返信は遅くてもいい」という文化のようなものがあり、「返信は2~3日後でもいい」、「返信はしなくてもいい」と思っている人も結構な割合でいるような気がしています。例えば、同僚に何かを確認するために2往復のやり取りが必要な内容の場合、対面であれば2~3分で済むのにメールやチームコラボレーションツールでは2日間かかってしまう、というようなこともよくありますよね。
このような非同期コミュニケーションの効率が極端に悪い環境のままテレワークを開始しても、確実に「テレワークだとコミュニケーションがとりづらい」となりますよね。そのような場合に非同期コミュニケーションの問題を改善することなく、テレワークの問題だと解釈してしまうことには、少し疑問を感じてしまいます。
当社にも正直、返信が早い人と遅い人がいますが、全体的に早い方だと思います。私自身、メールやチームコラボレーションツールでメッセージを受けた際、少し極端な表現かもしれませんが「近くにいて話しかけられた」くらいの意識で受けるようにしています。近くで話しかけられた場合、無視はしませんよね?その感覚で受け取るため、ミーティング中で返信できないような時は別として、すぐに返信するようにしています。調べてから返信する必要があるようなものも、「ちょっと後で調べて、今日中に返信するね。」など反応だけはするようにしています。
このような意識改革をしたうえでテレワークに臨めば、コミュニケーションにおける課題の多くは解決できるのではないかと思います。
Web会議での課題
メールやチームコラボレーションツールほどではありませんが、Web会議においても課題はあります。
例えば、Web会議で顔を見せない人、多いですよね。こういう些細な違いも、実は生産性としては結構大きな違いを生むと私は思っています。
この件は、5年前になりますが「「Web会議で顔を見せること」のプラス・マイナスの影響を再考する その1~4」で詳細に深堀りしていますので、本投稿での説明は割愛したいと思いますが、こういう考慮無しにテレワークを実践してしまうと、じわじわと影響が出てくるため注意が必要です。
また、Web会議を実施するまでの過程にも課題があります。これは前述の「メールやチームコラボレーションツールでの課題」と重複しますが、何かを話したいと思ってもWeb会議のスケジュール調整で手間取るため、結局実施は数日後になってしまったりします。
当社では、「この件、ちょっと話せます?」「今取り込み中なので、30分後に!」など、スピーディにWeb会議を開始できることが多いです。ここまでできれば、もはや一緒の空間にいるのと同等のパフォーマンスが出せると思いませんか?
以上、テレワークにおけるコミュニケーションの課題について考えてみました。私としてはテレワークが問題なのではなく、「コミュニケーションの潜在的な課題をそのままにテレワークを実践してしまった」ことが問題だと思っています。
もちろん、直接的なFace to Faceの場も重要なため、適度にそのような場を持つことを意識したうえで、リモートにおいて上記のようなことを考慮した適切なコミュニケーションを実現すれば、テレワーク特有の問題というものは起こらないと思います。
テレワークを採用する企業が減っている中ですが、テレワークを完全撤廃しているわけではなく、削減しているだけの企業も多いと思います。そう考えると、今からでも上記のようなことを改めて考え、改善してみるのも効果的なのではないでしょうか。
<関連する投稿>