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「情報通信白書 令和4年版」から今を読む その3 ~ワーク・フロム・ホームの現状~

松田 幸裕 記


新型コロナウイルスの第7波が高止まり状態にあります。検査を受けられていない人も多く、新規感染者数は現状を正しく反映していないと思われますが、死者数を見ると1日300人に達している状況で、特に高齢者の方々から見ると危険な社会になっていますね。

そのような中、新規感染者の「全数把握」が話題になっています。「なぜ全数を把握することが問題なの?」と思いきや、よくよく見てみると問題は「HER-SYSへの入力の煩雑さ」のようですね。既に国で持っていると思われるワクチン接種歴、7割以上が不明でもはや使い物にならない感染経路情報など、入力をスリム化できる部分は多くありそうです。波がピークに来てからでは遅いため、平時でも常にその先の動向を想定し、ITを改善していくサイクルが必要ではないかと、改めて感じています。

本題に入ります。総務省より、「情報通信白書 令和4年版」が公開されました。前回前々回に続き、本資料から各種テーマをピックアップして考察してみたいと思います。前々回は日本における人口の減少とITの関係について、前回はクラウドサービスの活用について考察しました。本投稿では、ワーク・フロム・ホームの現状について触れてみたいと思います。

(白書では「テレワーク」という用語を使っていますが、本ブログでは主に「ワーク・フロム・ホーム」という用語を使ってきたため、本投稿でも「ワーク・フロム・ホーム」で統一したいと思います。)

各国のワーク・フロム・ホーム利用状況

日本、米国、ドイツ、中国の4か国における、ワーク・フロム・ホーム利用状況のグラフが載っていました。

テレワークの利用状況(国別)

このグラフによると、ワーク・フロム・ホームを利用したことがあると回答した割合は、米国・ドイツでは60%弱、中国では70%を超える一方、日本では30%程度にとどまっています。そして、「必要としていない」と回答した割合は、他国では最大で20%程度なのに対し、日本では40%を超えています。

以前の投稿「「with/after コロナ」におけるワーク・フロム・ホームを考える その6」では、日本生産性本部が2020年5月以降定期的に行っている「働く人の意識調査」というアンケート調査結果について触れました。そこでもワーク・フロム・ホームの実施率は低かったのですが、ワーク・フロム・ホームを今後も行いたいという人が多かったという結果が出ています。しかし白書での結果としては「必要としていない」が多いとのことで、異なる結果になっているようですね。「ワーク・フロム・ホームを行いたい」と「ワーク・フロム・ホームは必要」は別物なのかもしれません。

各年代のワーク・フロム・ホーム利用状況

もう一つ、日本における年代別のワーク・フロム・ホーム利用状況のグラフも載っていました。

テレワークの利用状況(日本・年代別)

このグラフも興味深いですね。ワーク・フロム・ホームを利用したことがあると回答した割合は、60歳代が約20%であるのに対し、20歳代が約35%です。また、「必要としていない」と回答した割合は、60歳代が60%を超えるのに対し、20歳代が約30%です。

ITリテラシの差によるものなのか、「ワーク・フロム・ホームでは仕事にならない」という思い込みの強さの差によるものなのか、いろいろと理由はありそうですが、今後徐々に年代の入れ替わりが進むにつれて、ワーク・フロム・ホームの実施率も上がっていくのかもしれませんね。

ちなみに弊社では?

以前も何度か書いていると思いますが、弊社ではコロナ禍に入る前から、出社や顧客訪問の必要がない限りワーク・フロム・ホームでよいというスタンスで働いています。「たまには飲みに行こうよ」という話は出ますが、「そろそろ集まって仕事をするようにしようよ」という話は誰からも出ません。それはそうですよね。通勤時間が片道1時間として、1日2時間、1か月(20日間)で40時間も給与に反映されない拘束時間あり、それを削減できているのですから。4月に新卒で数名が入社し、もしかすると彼らは会社に集まりたいかもしれないと思って時々意見を聞きますが、「今のままがいいです!」という感じで、ワーク・フロム・ホームが快適なようです。

単純にワーク・フロム・ホームを実施し続けていると、関わり合いの欠如による悪影響が生じてきますが、弊社では様々な施策によって関わり合いを増やし、悪影響が極力出ないようにしています。コロナ禍が続いているため、懇親会などが減っていることは改善したいところですが、ワーク・フロム・ホームによる悪影響はほぼ出ていません。

各種理論の活用、仮説と検証の繰り返しなどにより、適切に対策を打っていければ、ワーク・フロム・ホームはデメリットが少なく、メリットが多いものになると思います。今後も感染症のみでなく水害、熱波、地震、育児や介護など、様々な要因でワーク・フロム・ホームの必要性が高まると思いますので、今後も働き方の改善を進めていきたいと思っています。