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「情報通信白書 令和4年版」から今を読む その2 ~クラウドサービスの活用状況~

松田 幸裕 記


お盆の時期ですね。皆さまどのようにお過ごしでしょうか。

ゴールデンウィークやお盆、年末年始などは休暇をとる人が多く、交通渋滞など様々な問題を引き起こしています。これらの問題を解決するために「休み方改革」などのキーワードのもと、長期休暇の分散化が検討されています。ニュースや情報番組でこの手の話が取り上げられる際、「なんで長期休暇の分散化の検討は一向に進まないのか?」、「長期休暇の分散化を進めるべき!」というようなトーンが主流のようですが、、、各企業を支援している我々のような仕事の場合、各企業が一斉に休んでくれると我々も休みやすく、分散されてしまうと休みにくくなってしまうのですよね。ただ、この長期休暇の分散への流れは今後加速しそうな気がするため、我々もその時に備えた休みの取り方を考えないと、と思っている今日この頃です。

本題に入ります。総務省より、「情報通信白書 令和4年版」が公開されました。前回に続き、本資料から各種テーマをピックアップして考察してみたいと思います。前回は日本における人口の減少とITの関係について考察しました。本投稿では、クラウドサービスの活用について触れてみたいと思います。

クラウドサービス全体の状況

世界のパブリッククラウドサービス市場の動向を示すグラフが載っています。

世界のパブリッククラウドサービス市場規模(売上高)の推移及び予測

この成長ぶりについては、皆さんも特に違和感がないのではないでしょうか。オンプレミスで構築していた各種システムが、徐々にクラウドサービスへ移行されているという感覚をお持ちの方は多いと思います。

私自身2010年~2015年頃、クラウドサービスの活用を各企業へ啓蒙していた一人でした。2010年代前半はまだ「重要なデータを社外に出すなんてあり得ない」という空気が蔓延していて、私が「皆さん、大切なお金を銀行に預けていますよね?データも同じで、信頼できるクラウドサービスになら預けてもいいのではないでしょうか?」と説いても、あまり良い反応は得られなかったことを覚えています。

現在は、「あの頃の空気は何だったのだろうか…」と思うくらい気軽にクラウドサービスが使われているように思います。「信頼できるクラウドサービスに」という点は今も重要な要素であるため、これを念頭に置いて積極的に活用していきたいですね。

クラウドサービスのタイプ別の状況

上図では、IaaS、CaaS、PaaS、SaaSで色分けされて推移が確認できます(CaaSはどちらかと言うと「Containers as a Service」として扱われることが多いと思いますが、白書では「クラウド上で他のクラウドのサービスを提供」という意味で「Cloud as a Service」として扱われています)。

維持管理しなければならない要素をクラウドサービス側に移すという意味では、最も恩恵を受けられるのはSaaSですね。ハードウェアの保守期限切れや、OSのサポート切れに悩まされることもなくなります。一方で、IaaSはハードウェアの保守期限切れに悩まされることはなくなりますが、OSのサポート切れには引き続き対応が必要です。

ITの活用範囲が広がり続けている現在、情報システム部門としてお守りをしなければならない業務システムは増える一方です。次から次へと「今期はこのシステムとあのシステムのハードウェア保守が切れる」、「来期はあのOSのバージョンがサポート終了になる」などのイベントが押し寄せてくるため、ITによる新規の価値創造に手が回らないという企業も多いのではないでしょうか。情報システム部門としては人的リソースを増やして、既存ITの維持にも新規の価値創造にも対応していきたいところですが、増える一方の維持業務は企業として直接価値を生んでいるとはみなされず、人的リソースを増やすことは簡単には認められません。

現在の傾向としてはIaaSの割合が多いですが、維持管理に必要な人的リソースなども加味し、できる限りPaaSやSaaSへ持って行けるといいですね。

日本ではIT企業の人材が比較的多いことを考えると、開発する企業がPaaSのノウハウをしっかり蓄積し、IaaSではなくPaaSで実装する形がスタンダードになっていくと、流れが大きく変わってくるかもしれませんね。