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IT人材白書2020から今を読む その1

松田 幸裕 記


菅内閣が発足して1か月弱、「デジタル庁」、「脱ハンコ」など、IT化に関連した動きが見えてきています。実際は根深い問題が埋もれていて、本質的な改善は簡単な話ではないと思いますが、今後の動きに期待したいですね。

そんな中で、日本学術会議の問題が浮上しており、順調な政権スタートとは言えない状況になっています。日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否したことから、大きな問題に発展してきています。任命を拒否した理由が不明確であること、政府の意にそぐわない人を排除したのではないかという憶測がでていることなど、不信感が高まっています。

「法の解釈変更では?」「学問の自由が侵害されるのでは?」などいくつかの角度から問題提起がされていて、さらには「そもそも日本学術会議の存在意義は?こちらが本質的な問題では?」という話にもなってきていますが、、、私がこの問題から見える最大の問題は、「国民の声に耳を貸さない政府の意思決定を成立させている構造」です。

以前の投稿「効果的なIT導入に向けて ~「シナリオ」の活用~」でも書きましたが、現在は野党が弱く、与党一択という状態です。与党が国民の声に耳を傾けず、利己的な意思決定をし、「任命拒否の理由を示して!」という要求に「総合的、俯瞰的活動を確保する観点から判断をした」で突っぱねても、与党一択の状況であるため、少々国民に不満がたまっても心配することはありません。いい加減に振舞っても選択肢として自民党しかないという現状を改善していかなければ、森友・加計問題、それに絡む公文書改ざん問題、桜を見る会の問題なども含め、このような問題は起こり続けるのではないかと思っています。

今回も前置きが長くなりましたが、本投稿では「IT人材白書2020」の内容から、デジタルトランスフォーメーションの現状について考えてみたいと思います。

IT人材白書2020 公開

8月末に、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が「IT人材白書2020」を公開しました。

1年に1回公開されるこのIT人材白書には、毎回タイトルが付与されています。今年は「今こそDXを加速せよ ~選ばれる“企業”、選べる“人”になる~」というものです。直近5年間では、やはりデジタルトランスフォーメーションに絡めたタイトルが多いですね。日本におけるデジタルトランスフォーメーションが待った無しの状況であることがわかります。

  • IT人材白書2015
    新たなステージは見えているか ~ITで“次なる世界”をデザインせよ~
  • IT人材白書2016
    多様な文化へ踏み出す覚悟 ~デジタルトランスフォーメーションへの対応を急げ~
  • IT人材白書2017
    デジタル大変革時代、本番へ ~ITエンジニアが主体的に挑戦できる場を作れ~
  • IT人材白書2018
    Society 5.0 の主役たれ ~企業・組織から、個人・チームの時代へ~
  • IT人材白書2019
    人から始まるデジタル変革 ~イノベーションを生む企業文化・風土を作れ~
  • IT人材白書2020
    今こそDXを加速せよ ~選ばれる“企業”、選べる“人”になる~

白書のボリュームとしては200ページ以上ありますが、時間が割けない人は「概要版」も公開されているため、ご一読をお勧めします。

デジタルトランスフォーメーションの成果は「効率化」?

「DXやデジタルビジネスの取り組み内容と成果」が、本白書の各所に示されています(図表等の転載はIPAの承認が必要なため、転載は控えます。「DXやデジタルビジネスの取り組み内容と成果」で本白書を検索してご確認ください)。これを見ると、デジタルトランスフォーメーションの成果が最も出ている領域は「業務の効率化による生産性の向上」とのことです。

デジタルトランスフォーメーションの定義や解釈は各種あるため、「効率化がデジタルトランスフォーメーションの成果でいいのか?」という点については賛否あるでしょう。「トランスフォーメーション」なので、デジタル技術を用いて程度の差こそあれ「変革」ができていて、その結果として効率化という成果が出ているのであれば、それはそれで嬉しいことだとは思います。

ただ、、、「まだ効率化は進んでいないのか…」という残念な気持ちは残ります。ITが企業の業務の効率化に貢献し始めてから、数十年が経過しています。それなのに、未だに効率化が十分に進んでいないのは、大きな課題のように思えます。

日本におけるITへの期待は「効率化」

7年前の情報になりますが、JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)が公開した「ITを活用した経営に対する日米企業の相違分析」の調査結果を思い出しました。

図2にて表現されていますが、「今後ITに期待する効果」について、日本は「社内業務効率化・労働時間減少」がトップでした。それに対し米国は、「製品・サービス提供の迅速化、効率化」がトップ、「ITを活用したビジネスモデル変革」が2位でした。

「日本は効率化ではなく、ITを活用したビジネスモデル変革に舵を切らないと!」と一瞬思いますが、、、それより、「なぜ日本ではここまで効率化がうまく進んでいないのか?」を解決しない限り、前には進めないのかもしれません。

この原因としては、ウォーターフォールなど開発プロセスの問題、ユーザー部門とIT部門との壁、ITベンダーとの請負契約、役割の細分化による人材育成への弊害など、様々な問題がありそうです。日本企業がデジタルトランスフォーメーションを進めるうえでは、これらの問題に向き合い、改善していく必要があると強く感じており、今後もこれらのテーマについて継続的に触れていきたいと思っています。