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日本の少子化問題を問題解決フレームワークで考える その1

松田 幸裕 記


厚生労働省から「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」が発表され、ニュースや情報番組で話題になっています。

「結果の概要」を見ると、「出生数は72万7277人で、前年の77万759人より4万3482人減少」、「合計特殊出生率は1.20で、前年の1.26より低下」など、不安な数字が並んでいます。つい先日、イーロン・マスク氏が「抜本的な対策をしなければ日本や他の多くの国は消滅するだろう」と警鐘を鳴らしましたが、確かに抜本的な対策が必要な状況ですよね。私自身、過度でない少子化は特に問題とは思いませんが、「多数の高齢者を少数の若者が支えなければならない」という構図はどうにかしないといけないと思っています。

東京都の合計特殊出生率は0.99と最低です。多くの若者が地方から流入してきているのに出生率が最低ということで、東京都は「ブラックホール」などと呼ばれているようです。「東京都の少子化対策のご紹介!」のページにある通り少子化対策は行っていますが、現時点では効果が出ていないということになります。

以前の投稿「「働き方改革」を再考する その3 ~国内出生数90万人割れの現実とどう向き合うか~」でも少子化問題について触れたことがありますが、本投稿では「問題解決」という視点でこの少子化問題を考えてみたいと思います。


ビジネスなどの問題解決で使われるフレームワークに、ロジックツリーがあります。ロジックツリーとは、問題の要素や原因などをツリーとして分解し、原因や対策を発見する手法です。ここでは細かく触れないため、興味がある人は「ロジックツリー」、「分解の木」などでWebを検索して調べてみてください。

子供が生まれるまでにどのような過程を経るのか?という観点で、大まかにロジックツリーで表現したものが下図になります。

こどもが生まれるまでの一般的な過程

中には結婚しないで子供を産む人もいますが、割合としては今も昔も非常に低いため、除外しています。ただ、より細かく原因や対策を考える場合には、この辺りも考慮が必要ですね。

子供を産むまでの主要な流れとしては、「出会う」→「付き合う」→「結婚する」→「子供を産む」となり、それぞれのフェーズで「出会わない」、「付き合わない」、「結婚しない」、「子供を産まない」という方に行ってしまうと子供が生まれないことになります。この①~④のどの分岐で子供を産まないという結果になっているのかを探り、大きな原因となっているところ、効果がありそうなところに効果的な対策をしていくということになります。

まず④の「結婚したのに子供を産まない」という傾向ですが、データを見る限りでは今も昔も大きく変わりはないようです。こども家庭庁より公開されている「令和4年度 内閣府委託事業 少子化が我が国の社会経済に与える影響に関する調査」では、完結出生児数(結婚後15年から19年の初婚夫婦が授かる子ども数)の推移を見ると、ここ50年間ほどでは大きく落ちていません。そう考えると、少子化という点ではこの部分が大きな原因ではないと言えます。

完結出生児数の推移
(こども家庭庁「令和4年度 内閣府委託事業 少子化が我が国の社会経済に与える影響に関する調査」より)

また、下図は出生数・出生率の推移と婚姻数・婚姻率の推移を並べたものです。これを見ると、全体的な傾向としては類似しているように見えます。そう考えると、主な原因はやはり④ではなく①~③にありそうです。

左:出生数及び合計特殊出生率の年次推移
右:婚姻件数及び婚姻率(人口千対)の年次推移
(厚生労働省から「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)

次に、①と②の「出会わない、付き合わない」という傾向について見ていきたいと思います。国立社会保障・人口問題研究所より公開されている「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、交際相手をもたない未婚者の割合が増えているようです(下図)。

調査・年齢別にみた、交際相手をもたない未婚者の割合と交際の希望
(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」より)

出会わないから付き合わないのか、出会うけど付き合わないのか、そのあたりはわかりませんが、図を見る限りでは①と②が大きな問題になっているように見えます。各自治体ではマッチングサービスなどの仕組み構築を進めていて、東京都もようやく準備を開始したようですが、「出会う」、「付き合う」のきっかけづくりを促進する活動は効果がありそうです。

情報番組などでは少子化問題に絡めて「子育てにおける課題」という話を持ってくることが多いように思えますが、上記のように整理して考えるともう少し建設的に問題を語り合うことができるのではないか、と思っています。この問題に限らず、ビジネスやITで発生している問題も、思い付きではなくこのように整理して議論することを、ぜひお勧めします。