松田 幸裕 記
最近、生成系AI(Generative AI)というキーワードが世間を賑わせています。この技術によっての恩恵は多くありそうですが、一方でこの技術を利用したフェイクニュースの増加、犯罪の増加なども懸念されています。また、正しい形でこの技術が活用されたとしても、「雇用を奪われる」という心配も出てきそうです。日本は人材不足が続いているため、当面は雇用を奪われることはないのでは?という意見もありそうですが、「誰にでもできる簡単な作業は機械やコンピューターがやってくれるため、人間にやってもらう必要がなくなる」ということにはなるでしょうから、うかうかしてはいられません。
一概には言えませんが、人間の脳は20~30代から徐々に衰えていくそうです。年金の支給開始年齢が少しずつ高くなるこの時代、そして進化した技術に簡単な仕事を奪われていくこの時代、私たちは60歳になっても70歳になっても若々しい脳をできる限り維持し、日々学習し、価値を提供できる人材でいる必要があります。そう考えると、なんだか大変な時代ですね…。
先日、「運動脳」という書籍を読みました。かなり売れているため、既に読んだ方も多いと思いますが、個人的に結構刺激を受けた書籍でした。
簡単に表現すると、「運動により、脳の劣化を遅らせるどころではなく、脳を成長させることすらできる」というものです。実験結果や理論などが繰り返し説明されるため、少々しつこさを感じたり、「で、くどくど言わずシンプルに説明してよ」と思う人もいるかもしれませんが、読んだ内容を自分なりに整理してみると、私としては納得感が大きい書籍だったと感じます。
ここ数年で、「脳トレの効果には科学的根拠がない」という話が多く出てきていて、このことに反論する記事などはあるものの根拠が弱いような気がしています。一方で運動による脳への効果について説明されている書籍は多くなってきていて、盛り上がってきているように思えます。
例えば、脳には記憶を司る「海馬」という器官がありますが、持久力系のトレーニングを一定期間行った人の海馬が成長したという実験結果などが紹介されています。1~2名で数週間で行った、というような簡単なものではなく、研究チームが100名以上の被験者を対象に1年間程度の期間で、無作為にグループ分けをして実験をする、という結構本格的なものが紹介されています。このような研究結果、その理論などが丁寧に紹介されていて、運動による集中力向上、記憶力向上、創造性向上、うつ病解消、認知症対策などへの影響が説明されています。この内容に興味が沸いた人は、ぜひ一度読んでみることをお勧めします。
これがもし本当だとすると、従業員の運動は企業にとって「健康経営」の域を大きく超え、「効率化」や「知識創造」などビジネスの根幹に影響する要素になります。多くの従業員が継続的に運動を行うことで、組織全体の生産性向上や継続的なイノベーション創出などにつながるのであれば、ここに力を入れないという手はありませんよね。
継続した運動のためにはモチベーションが重要になってくるため、組織としての具体的な手段をどうするか?ということはしっかり考えなければなりません。実現は簡単ではないかもしれませんが、従業員の継続的な運動がビジネスの成長に寄与し、さらに本人の健康、そしてご家族の幸せにつながると信じ、ぜひ積極的に推進していきたいですね。