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2023年、ITを俯瞰する ~IT人材不足~

松田 幸裕 記


新型コロナウイルス第8波で、死者数は全国で1日400人を超えてきています。2022年の1年間で累積死者数は全国で4万人弱。コロナ禍前、インフルエンザをきっかけにした死者数は年間1万人程度と言われていましたが、その4倍になります。そして犠牲になっている人の多くは高齢者です。なんとなく「With コロナ」という空気が醸成されてきていますが、、、それは言い換えれば「この程度の死者数が出るというリスクは、日本として受容します」となっているような気がします。なんとなくそういうことになっていますが、本当にそれでいいのかと、複雑な心境です。

本題に入ります。新年ということで、ITを俯瞰して「今、何が起こっているのか?」を考えてみたいと思います。本投稿では、最近特に気になっている「IT人材不足」について触れていきます。

IT人材不足の深刻化における現状

今までも何度か話題として挙げていますが、IT人材不足は深刻化しています。情報通信白書DX白書などでも大きく取り上げられますし、ITセキュリティなど特定の領域でも人材不足が問題として挙げられることが多くなっています。ITのみでなく全体的に人材不足はあるようですが、その中でもITの人材不足は特に深刻化しています。

個人的に感じるのは、「人材はいるが、適任者がいない」ということです。実際に「転職したい」というIT人材は多く存在し、募集すれば少なからず応募はありますが、求めている人材がいないというのが実態のように思います。そしてこれも個人的な感覚ですが、長い間単純作業に近い業務を行ってきていて、スキルの深さや幅を広げることができず、企業が求める人材になれていない人が多いように感じます。

成長のための環境

そのような人のレジュメを拝見した際に、私の中では「なぜ長い間この環境に甘んじてきてしまったのか?そして企業は、従業員の成長をどう考えてきたのか?」という疑問が生じます。前者については自己責任という考え方もありますが、後者については企業がもう少し従業員の成長について考え、長期的な視点で組織全体の生産性向上を目指すべきではないかと思ってしまいます。

業務を進めるための教育という意味では、その手順を伝え、あとはOJT(On-The-Job Training)で上達してもらうという程度で、なんとか成り立ちます。しかし、課題の発見や新たなアイデアの創出などを業務の中で行うことができ、改善活動を行えるようになるにはそれだけではだめで、「常に考えることが大切」、「日々、学びである」、「固定観念にとらわれない」などの意識を醸成する必要があります。それも含めての育成を行う環境が、企業には必要ではないかと思います。

従業員の学ぶ姿勢

もう一つの大きな要素としては、従業員の学ぶ姿勢です。先ほど書いた「なぜ長い間この環境に甘んじてきてしまったのか?そして企業は、従業員の成長をどう考えてきたのか?」という疑問の、前者にあたる要素です。先ほどは「自己責任」と書きましたが、、、「私の業務はこれで、何かを決めるのは私ではなく上の人。これさえやっていれば給料はもらえるし、他のことは私の仕事ではないため特に知っておく必要もない。」と思ってしまうような環境をつくった側にも問題はあると思っています。本人の問題でもありますが、その環境をつくった側にも問題はあると思います。

日本は法律で雇用がかなり守られていて、このような姿勢で仕事をしていても正社員でいる限りは安全です。雇用が守られていることはある意味で素晴らしいことですが、従業員の学ぶ姿勢、成長しようという姿勢を醸成するためには、最低限の保障の上で「努力すれば報われる」という意味で成果主義をしっかり取り入れたり、「言われたことをやるだけでなく、自分で決定・提案することもできる。」という風土を醸成することが必要ではないかと感じています。

以上の通り、私はIT人材不足の主な原因が「人の成長」にあると考えています。「人の成長」における問題は、最近よく話題になっている「賃金が上がらない」などの問題ともつながっており、多くの問題の根幹にあるように感じています。そして、人が成長する環境を各企業が構築できれば、人材不足もかなり解消されますし、生産性が向上して「賃金が上がらない」という問題も解決できると思っています。

「言うは易く行うは難し」で、人が成長する環境を構築するのはとても難しいことです。実際、弊社もこの環境をつくるために日々試行錯誤しています。難しいことではありますが、「学習する組織」の実現を目指し、一歩ずつでも進んでいきたいと思っています。