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「失敗から学ぶ」の難しさ

松田 幸裕 記


サッカーワールドカップが盛り上がっていますね。明日の夜の決勝戦を待つ楽しみと、もう終わってしまう寂しさとが入り混じった、複雑な心境です。

日本の躍進はベスト16までとなり、日本としてのワールドカップは幕を閉じました。ドイツ、スペインが同じグループにいる中で1位突破したことは素晴らしいことで、それだけにクロアチアにPK戦で負けたことが悔やまれますね。

本投稿では、この中で私が覚えた違和感から、「失敗から学ぶ」というテーマに広げて、考察してみたいと思います。

情報番組を見て覚えた違和感

各情報番組では連日ワールドカップのネタが取り上げられましたが、その中で違和感を覚えることがありました。勝った時は「ポジショニングはこうで、この采配がすごかった。このプレイもあのプレイもすごかった。」など事細かに振り返るのですが、負けた時は軽く振り返る程度で、「残念だけど切り替えよう!次のスタメンはどうなる?」、「よくやった!お疲れ!夢をありがとう!」などの当たり障りのない話が中心になる感じがしました。

勝った時の振り返りも学びになりますが、負けた時の振り返りはもっと学びになると思います。個人的には、今回の4試合を見て例えば「4バックと3バックをどう使い分けるべきなのか?3バックにしても守りが続いて実質5バックになることが想定できる場合、あるいは攻めることができて3バックを維持できることが想定できる場合など異なるパターンがあると思うが、それぞれで中盤やトップはどういうタイプの人が適任なのか?」などの理論について知りたいと思いましたが、そういう会話が深くされるのは勝った時のみで、負けた時はさらっと流してしまっている感じがしました。

こういうテーマを元日本代表のコメンテーターの方々が話しあってくれるととても参考になり、それを見ているサッカー少年たちの学びにもつながると思うのですが…。

失敗や敗戦の振り返りを「吊し上げ」と捉える風潮

上記のような話を考えていて、ふと昔の出来事を思い出しました。当時属していた会社で、部門内での学びのイベントを企画した際、「成功事例より失敗事例の方が学びが多いため、失敗事例を募集して話してもらおう。」という場を設けたことがあります。そこでは何人かの人たちが立候補してくれて、「私はこういう進め方をしてこういうことに陥ったため、今後はこういう点に気を付けるようにしようと思った。」などの話を披露してもらったのですが、その後にとったアンケートでは「失敗事例を話させるというのは吊し上げのように思える」というようなコメントがいくつかありました。

私自身は失敗を「恥ずかしいこと」だと思っておらず、せっかく失敗したのであればそこから十分に学びを得るべきだという気持ちが強いのですが、失敗を「恥ずかしいこと」だと思っている人はこのような振り返りを「吊し上げ」と感じてしまうのかもしれません。

「問題」から考えることに慣れていない風潮

もう一つ、昔の出来事で思い出したことがあります。当時属していた会社の上層部に対し、部門における現在の問題を提起し、改善策を提案した時のことです。そこである上層部の方から言われたのは、「ネガティブだ」、「否定的だ」という言葉でした。

以前の投稿「意思決定・合意形成を最適化するために」で書いた通り、意思決定や合意形成を進めるうえでまず現状の問題から入ることは正しいプロセスだと思います。しかし、問題から入ることに対し「ネガティブだ」、「否定的だ」と反応する人もいることも事実です。

根本的な帰属の誤り

人の悪い行動や結果の原因を説明するにあたって、その人の能力や性格的な面を重視しすぎて、状況的な面を軽視しすぎる傾向を「根本的な帰属の誤り」「対応バイアス」と言います。本当の理由は周辺環境などの「状況」にあるのに、理由を当事者の人格・資質などに帰属させてしまう傾向を、私たちは持っているのです。

前述の2つの例と照らし合わせると、失敗や問題を考える際、私たちはついつい「この人のXXが悪い」など、人に原因を求めてしまう習性があるため、「吊し上げ」、「ネガティブ」、「否定的」という印象になってしまうのかもしれません。

サッカーの話に戻すと、どうしても負け試合を振り返ると人に問題を持っていってしまう習性があり、「XXのミスが…」や「森保監督の采配が…」など人を責める形になってしまうのかもしれません。私たちはこの人間の習性を理解し、人を責めるためではなく「これからどうするか?」を考えるために振り返りを行うんだ、という意識を持つ必要があると思います。

ITでも同じような場面は多くあります。「人的ミスで障害を起こした」、「導入プロジェクトで大幅な手戻りと費用増が発生した」など問題が発生した場合、それを振り返ることで多くのことを学べるはずですが、上記の理由で振り返ることを躊躇しがちです。よく、「計画重視の日本、振り返り重視の欧米」と言われたりもしますが、日本人は振り返らない傾向が特にあるのかもしれません。「これからどうするか?」を考えるため、未来をよくしていくために過去と現在を考える、というイメージで、振り返りを行えるようにしたいですね。