松田 幸裕 記
日本政府は、2024年秋には現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化すると発表しました。事実上のマイナンバーカード義務化ということになります。
適切な意思決定が行われたようには思えず、「鶴の一声」で決まったのだろうと想像できますが、、、義務化するのであれば、カード普及を目的としたマイナポイントのキャンペーンなどは不要だったということですね。
また、以前の投稿「マイナンバーの重要性について再考する ~マイナンバーは極秘情報なのか、それとも手軽に使うべき情報なのか?~」で触れましたが、保険証などいろいろな用途で使えるようにするのであれば、マイナンバーの重要性について再考すべきではないかと思っています。
本題に入ります。ハーバード・ビジネス・レビュー 2022年10月号は、「DXを成功に導く組織のデジタルリテラシー」についての特集でした。DX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めていくには今までのように情シス部門のみ、あるいはDX推進部門のみでは難しく、各業務部門がデジタル技術に関するスキルを持ち、全体としてITの活用を推進していく必要があると言われています。
以前の投稿「日本におけるDX推進の阻害要因を探る」でもDXについて考察しましたが、本投稿でも改めてDXについて考えてみたいと思います。
DXとは?
最近はいろいろなところでDXという用語を見かけます。その多くは「IT化」「デジタル化」のことをDXと言っているだけのように思えますが、本投稿ではDXを本質的に扱います。以前の投稿「日本におけるDX推進の阻害要因を探る」で、総務省発行の情報通信白書に書かれている内容から解釈し、DXを「デジタル技術を当たり前のように活用し、ビジネスの変革を繰り返していくこと」と表現しました。本投稿でも、この表現がDXを意味するものだとして話を進めます。
DX時代の役割分担は?
ここからはかなり私見が入ります。DXを進めていくうえで、すべてを情報システム部門、またはDX推進部門で賄っていくのは非現実的であり、そのような体制にしてしまうとDXは進みません。適切に役割を分散していく必要があると考えます。大雑把な表現ですが、以下のようになるのではないでしょうか。
- 情報システム部門、DX推進部門
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- 全社に関わるインフラ(ネットワーク、サーバー基盤、デバイス、セキュリティ、コミュニケーション・コラボレーション基盤など)の整備は引き続き主体となって進める必要があります。また、システムを導入するうえでのガイドラインを策定し、それを全社へ周知・啓蒙する役割も担います。
- 現業部門
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- 主管する業務における、デジタルを当たり前のように活用した変革を推進します。前述のガイドラインを活用し、各種IT企業と協業して導入を進めることになります。
組織全体のデジタルリテラシーは?
冒頭に触れたハーバード・ビジネス・レビューでも、デジタルリテラシーの全社的な底上げが必要というようなことが書かれていますが、それは実際にはなかなか難しいのではないでしょうか。デジタルリテラシーの底上げはほどほどにして、システム導入を提案するIT企業の力をうまく借り、「業務のスペシャリストである現業部門」と「ITのスペシャリストであるIT企業」で協力して進めるのが現実解だと思います。もちろん、各システムがバラバラなアーキテクチャーで作られても問題ですので、セキュリティ対策の考え方、可用性確保の考え方などを示したガイドラインを情報システム部門がしっかり策定し、周知することも重要です。
かなり私見が入っていますが、このように考えてみると「今後、それぞれの部門でどのようなことを進めていく必要があるのか?」が見えてくると思います。上記が正解か否かは別として、各社でこのような全体像を検討し、何をしていくべきかを決めて推進していくことをお勧めします。