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ITの声に耳を澄ます

松田 幸裕 記


暑くもなく寒くもない、過ごしやすい季節です。原因は不明ですがコロナ禍も落ち着いてきたようで、行楽日和になってきましたね。

今年の冬は新型コロナウイルスとインフルエンザが同時流行するという専門家の意見があるようですが、どうなのでしょうか。2020年1~3月、新型コロナウイルスが流行り始めてまだ緊急事態宣言に至る前の段階で、インフルエンザの実効再生産数は1を切っていたと認識しています(参考:インフルエンザの発生状況)。そう考えると、現在の対策状況でも十分インフルエンザの流行を抑えることが可能かもしれません。どちらにしても、冬にまた感染拡大しないよう、注意して生活していきたいですね。

本題に入ります。今回の投稿は、「ITの声に耳を澄ます」というテーマです。実際にITが何かを話すわけではなく、これは私だけの感覚なのかもしれませんが、長年ITと接してきた中で「ITの声に耳を澄ます」ことの重要性を何度も感じたことがあります。いくつかの観点で「ITの声に耳を澄ます」ことの重要性について触れてみたいと思います。

ITの声:「素の私を受け入れてほしい」

過去に何度か本ブログにて取り上げたことがありますが、「現行踏襲」による意識が強く、新たに導入しようとしているパッケージ製品やクラウドサービスを素のまま受け入れられず、その結果多くの副作用を引き起こしてしまうという問題をよく見かけます。

多くの企業では、情報システム部門はユーザー部門より立場が低いのが現状です。そのような環境下で要件定義を進めると、「現行踏襲」という圧力がかかった場になることが多いです。今までできていたことができなくなる、またはやりづらくなると、ユーザーの不満は一時的にでも高まります。そのため、「現行システムでできたことは、新システムでも必須要件ね。」という言葉を明確に発することはありませんが、暗黙の了解として扱われ、現行システムの仕様ありきで新システムの仕様が検討されます。

ユーザー企業側からは「現行のシステムではこういうことができるけど、新システムではできる?」という現行踏襲を求める話が多く、導入ベンダー側もそのやり方に慣れてしまっていて、つい「現行はどうですか?」など現行を基準とした検討を行ってしまいがちです。

新たに導入しようとしているパッケージ製品やクラウドサービスを素のまま受け入れない場合、アドオン的なものを追加したり、ニーズに応えるために実現方法を細かく調べて検証したり、という工数が増えることになります。

標準構成での検証は製造元でしっかり行われていることが多いため、標準構成で利用することでシステムは安定し、仮に問題があってもその形で使用している顧客は多いため、早期解決も期待できるのですが、標準から乖離した環境ではその恩恵も受けられません。

「私たちは新しいシステムを導入する」ということを忘れずに、新しく導入するパッケージ製品やクラウドサービスの声に耳を澄まし、どのような思想に基づいてそれぞれの機能が存在するのかを理解し、既製アプリケーションに業務を合わせることを基本指針とすべきです。

ITの声:「ニーズが多い機能は一通り実装している」

例えば、パッケージ製品やクラウドサービスで、他システムとの連携を行う部分で不具合が発生しているとします。パッケージ製品やクラウドサービスの内部で発生している不具合であれば、その開発会社側の問題として対応してもらえますが、他システムとの連携部分となるとそうもいかないことは多いです。双方の開発会社に問い合わせたところで、取り合ってもらえないことも多いでしょう。

ただ、こういう問題に困っている人が多いことを考えると、その製品の開発者もその課題に向き合い、対応策を機能として実装している可能性も高いと言えます。

例えば、各種ログ出力機能です。何が起きているかがわからなければ対処のしようもなく、開発会社への問い合わせやクレームも増える一方となります。そのような状況を避けるためにも、他システムとの連携部分では比較的詳しいログの出力が可能になっている場合が多いと思います。設定変更によって詳細ログ出力モードにしなければいけない場合もありますが、そのような実装がされていることは多いため、やみくもに対応するのではなく「何が起きているのか?」を探ることをお勧めします。

また、それでもうまく動作しない場合の選択肢も用意されていることは多く、「こういう連携方法もありますよ」、「連携時のこのチェック処理を緩めることも可能ですよ」などがマニュアルに書かれている場合も多いです。「ITの声に耳を澄ます」ではなく、厳密にいえば「IT開発者の心の声に耳を澄ます」かもしれませんが、パッケージ製品やクラウドサービスを開発しているのは心を持った「人」であり、その人たちがどういう思いで開発してきたのかを考えることで、打開策が見つかるかもしれません。(最近は有象無象にアプリが存在し、中にはこのレベルに達していないアプリも存在するため、この点の見極めは必要かもしれません。)