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使われない機能がITに多く存在する理由 その3

松田 幸裕 記


以前の投稿「使われない機能がITに多く存在する理由 その1」「使われない機能がITに多く存在する理由 その2」において、

  • 「必要と思われる機能を要件定義フェーズで無理やり押し込む」
  • 「必要ない機能を必要だと思い、機能として盛り込んでしまう」

という問題を挙げました。
 今回はもう一つの理由として、「利用が必須でないIT領域の存在」を挙げます。

ITが企業で使われ始めた時代は、いわゆる「業務効率化」の領域でITが活用されてきました。見積書の作成、契約書の作成、受発注、勤務管理、等々。この時代のIT導入は企業にとって必須の業務プロセスをITに置き換えるものであるため、使わなければ業務を遂行できません。よって、一部で使いにくい機能はあるかもしれませんが、基本機能としては確実に使われてきました。

しかし最近では、「ドキュメント管理ツールで知的資産の集約」「エンタープライズソーシャルで気づきの共有」「データを分析して顧客ニーズを把握」「タブレットを現場で活用してサービス品質向上」など、業務プロセスとしては必須とはいえず、ITなしでも目的は達成できるような領域でITが使われるようになってきました。

前者の「業務効率化」の領域ではIT適用対象が必須業務プロセスであるため、多少使いづらくてもITは使わざるを得ない存在でした。しかし後者の領域では必須の業務プロセスとは言えないものが多く、使いづらければまったく使われない、あるいは必要最低限の機能しか使われないという現象が見られるようになっています。

この新しい領域で「活用されるIT」を目指すには、「上流フェーズで的確にニーズを把握する」「常に完成形を見せながら、ユーザーと会話し、完成形を徐々に充実させていく」などの工夫が必要です。他にも様々な方法はあると思いますが、このような工夫で「使われないIT」を撲滅し、ITの価値を高めていきたいですね。