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ITの集中化と分散化 その2

松田 幸裕 記


以前の投稿「ITの集中化と分散化」で、アプリケーションの集中と分散について、クライアント側に置くかサーバー側に置くかという観点で考えました。
今回は、「自社に置くのか(=オンプレミス)、社外に置くのか(=クラウド)」という観点で、集中と分散について考えてみたいと思います。

クラウドコンピューティングという言葉が使われ始めたきっかけは、グーグルのCEO(当時)エリック・シュミット氏だと言われています。しかし技術的には、クラウドコンピューティングに相当するものは以前から存在していました。
その一つが、ASP(Application Service Provider)です。ASPは、ネットワークを通じてアプリケーション機能を提供するという意味で、用語としては1998年ごろから使われ始め、2000年代前半から半ばに主に使われていたと記憶しています。
しかし、ASPはいまいち広がらなかったという認識です。技術的にはクラウドコンピューティングと同じなのに、なぜ広がらなかったのか。それは、ネットワークの進化と関係があります。

前述のエリック・シュミット氏は、当時サンのCTOだった1993年、「ネットワークがプロセッサーと同じくらい速くなったとき、コンピューターはネットワーク全体に広がるだろう」と述べました。
情報通信の進化に必要な要素は、CPU、ストレージ、ネットワークの3つだと言われています。このうち、CPUとストレージについては劇的な進化を遂げてきましたが、ネットワークの進化は他の2つと比較して遅れていました。
ASPというキーワードが盛んになった時期は、まだネットワークがASPという概念について来られる状況ではなく、クラウドコンピューティングというキーワードが出てきた時期から、エリック・シュミット氏が言っていた「コンピュータがネットワーク全体に広がる」という状況になるくらい、ネットワーク技術が進化してきたのでしょう。

各企業の施設内に分散してシステムを置くのではなく、クラウドのデータセンターに集中して置いて企業はそれを消費する、という形で、集中化の流れが加速しています。ただ、いくつかの要素を考えると、一方的にクラウド化の流れになるのかは、まだなんとも言えないと思っています。このあたりについては、また次回以降で考えていこうと思います。


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