松田 幸裕 記
以前の投稿「ITの多重下請け構造は不滅なのか? その1/その2」において、ITの多重下請け構造の問題や原因について触れました。この問題を解決するのは簡単ではありませんが、一歩ずつでも問題を解決していく必要があるため、改善につながると思われることを少しずつでも投稿していきたいと思っています。
昨年(2018年)の秋に、経済産業省よりデジタルトランスフォーメーション(DX)に関するレポートが公開されました。本投稿では、この「DXレポート」をもとに今後の在り方を探ってみたいと思います。
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
このDXレポートを超要約すると、「現状のITへの取り組みには課題が多い。これらの課題を克服せず、DXを実現できない場合、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある」というものです。上記ページにサマリー版もあるため、ぜひサマリー版だけでも一読することをお勧めします。
本投稿と関係する内容として、レポート本文の「ユーザー企業とベンダー企業との関係」の章で、ユーザー企業からベンダー企業への丸投げによる問題、責任範囲の問題、契約がウォーターフォール的な開発にしか適応できていない問題などに触れられています。これらの問題は従来のIT導入のみでなく、デジタルトランスフォーメーションを進めていくうえでも大きな足かせになるということです。
DXレポートの後半部分では、この問題への対策にも触れています。例えば、アジャイル的な開発における契約面の案として「A:内製モデル」「B:基本/個別契約モデル」「C:ジョイント・ベンチャーモデル」が示されています。現実を考えると乗り越えなければならない壁は多く、簡単にこれらの中から最適なモデルを選択し、あるべき姿へ向かえるわけではないと思いますが、今後を検討するうえでのヒントになるのではないでしょうか。
(個人的にはモデルBとCは課題が多くありそうで、ベンダー企業のリソースを活用したモデルAが最も現実的な解ではないかと思っています。)
デジタルトランスフォーメーションを推進しようとしている企業が多くなってきていますが、新しい技術や新しいビジネスモデルを検討していくと同時に、「ITへの取り組みにおける進め方や体制」についての再考が重要となってきます。デジタルトランスフォーメーションの波を良いきっかけとし、この問題と向き合い、最適解を導き出していきたいですね。