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RPAは労働生産性向上の救世主になれるのか?

松田 幸裕 記


RPA(Robotic Process Automation)がここ数年でかなりの広がりを見せています。私自身も何かあった時のために武器として使えるように、個人的に気に入っているUiPathを社内導入するなどしています。
 このテーマで思考を整理したいと思いましたが、以前にも同テーマで整理したことがあることをふと思い出しました。探してみたところ、2年前にRPAについて書いたものが見つかり、読んでみると現在考えていることとほぼ同じであったため、まずは2年前に整理した内容をそのまま載せてみたいと思います。


RPA(Robotic Process Automation)というキーワードが最近いろいろなところから聞こえてくるようになりました。
 人間がPCを使って行ってきた作業を自動化するというもので、これによる業務の効率化、生産性向上が期待されています。現状では定型的な作業のみ自動化できるというレベルですが、今後AI技術が取り込まれることにより、非定型的な業務の自動化も実現可能になるかもしれません。
 技術的には斬新なものとは言えず、例えば自動テストツールや画面統合系ツールなどでも、自動的に画面操作を行う仕組みはあります。それらのツールで使われている要素技術を使い、複合的に見える定型作業を効率化しようとするもの、とも言えます。

私がRPAから真っ先に連想するのは、Excelのマクロです。
 ExcelのマクロはExcelに限定された話であり、RPAはアプリを問わないという点で異なりますが、「定型的な作業を自動化する」という意味では共通しています。EUC(End User Computing)というキーワードが流行り、それとともにExcelのマクロで作業を効率化する流れがありました。
このような関連性を考えると、あるいは視点をずらして考えると、いくつかのことが見えてきます。

まずは副作用です。
 Excelのマクロが流行った末に起こった副作用として、次のようなものがありました。
「情シス部門が把握していないマクロが多数存在し、Officeのバージョンアップや業務システム改修によって動作不良を起こすのではないか?という影響調査に情シス部門が苦慮した。」
 RPAツールは、WebアプリではHTMLのタグなど、デスクトップアプリではウィンドウメッセージと呼ばれる要素などを扱い、動作します。業務システムの改修、インフラの改修による影響が、思ってもみない形で出る可能性も否定できません。EUCのように「しらないところで勝手にエンドユーザーが自動化している」という心配は少ないと思いますが、業務システムのチームとRPAの導入チームが異なるなどの問題で、システム改修の影響調査が不十分になる可能性は十分にあります。インフラや業務システムの変更による影響がどのようにRPAツール側に出てくるか?という点を把握したうえで導入していくことが重要と思います。

もう一つは、このような自動化が必要になる背景についてです。
 そもそも、ITが企業で使われ始めた当初から、いわゆる「業務効率化」の領域でITが導入・活用されてきました。見積書の作成、契約書の作成、受発注、勤務管理、等々。これらの業務効率化でのIT導入をさんざん行ってきたはずなのに、さらにRPAで自動化しなければいけないという点に、違和感を覚える人もいるのではないでしょうか。
 組織での定型的な業務を眺めてみると、「この作業って、業務システムと実際の業務プロセスが合っていないから発生しているだけじゃない?」と思えるシーンは多いと思います。そう考えると、RPAの需要の根源には「業務システムが業務を効率化しきれていない」という問題があるように思えます。RPAで補っていくのと並行し、業務システムの導入の在り方についても再考する必要があるかもしれません。

労働生産性の調査結果などを見ると、ホワイトカラーの生産性向上は進んでいないことがわかります。そういう意味で、RPAへの需要は大きいと思います。ただ、そうなってしまっている原因をしっかり考えて適切に対処しないと、つぎはぎ的な対応が増えて依存関係がさらに複雑化し、影響調査がますます困難になり、その割に効果が出ないということにもなりかねません。
 技術、手法などは多く揃ってきていますので、それらをどのように活用するかが重要なポイントになってきそうです。


以上が2年前に思考整理した内容です。
 長くなってしまったので、補足したい内容は次回以降で書かせていただきますが、現在感じていることも基本的には上記と同様です。RPAを効果的な武器とするためには、全体観で業務プロセスやITを眺めて適切な箇所で活用することが重要と感じています。