· 

離れて仕事をするだけで不信感は生まれる?

松田 幸裕 記


さまざまな要素がある働き方改革

「働き方改革」「ワークスタイル変革」など、生産性の向上や組織力の強化を目指し自社の働き方を改善する試みが、多くの企業で行われています。元々はIT中心で進められていた企業が多かった働き方改革ですが、2016年に政府が「働き方改革実現会議」としてこのテーマを取り上げて以降、人事部門や経営層が中心となって行われる企業が多くなりました。

働き方改革にはいろいろな要素がありますが、その中でも「テレワーク」「在宅勤務」「いつでも、どこでも」などのキーワードで扱われる、場所を問わず仕事ができる環境の構築は、欠かせない要素として検討が進められています。営業職など社外での活動が多い人、複数拠点を行き来することが多い管理者、育児や介護などと仕事を両立しなければならない人など、場所を問わず仕事ができる環境を必要とする場面は増えてきています。

技術的な観点でも、場所を問わず仕事ができる環境を実現できる状況になってきています。クラウド化、各種コラボレーションツールの進化などにより、始めようと思えばすぐにでも始められる状況にあります。

このように、場所を問わず仕事ができる環境は必要性としても待ったなしであり、技術面としても準備万端の状況ですが、その一方でテレワークなどを推進することによる副作用もささやかれています。

 

テレワークなどを推進するうえでの注意点

Face to Faceの欠如による悪影響は論理的にも証明されてきていますが、ここではつい先日ハーバードビジネスレビューに掲載された記事から、テレワークなどを推進するうえでの注意点を考察してみます。

ハーバードビジネスレビュー2018年12月号に「在宅勤務者の孤独」という記事が掲載されています。その記事では、通常の出勤者と在宅勤務者に同様のアンケートを行ったところ、在宅勤務者の方が「自分は取り残されている」「自分は非難されている」などの感覚を受けやすいという結果が出たとあります。本記事ではこの結果をふまえ、テレビ電話など映像と声によるツールを使っての、人と人との絆の重要性を謳っています(具体的なアンケート内容や結果は、ハーバードビジネスレビュー2018年12月号をご覧ください)。

離れた場所で業務を行っていることによって「XXさんは、ちゃんとやってくれているだろうか……」と漠然とした不安が募り、会って話してみるとホッとする、という場面はよくあると思いますので、上記のアンケート結果は私自身とても頷けます。

働き方改革の一環として「テレワーク」「在宅勤務」「いつでも、どこでも」などを推進するうえで、このような心情があることを忘れず、人と人との信頼をどのように維持していくかを並行して考えていく必要があると、改めて感じました。